昨日、諸葛瞻について調べていて気になったことメモ。
（メモ）鄧艾伝に登場する司馬師のフルネーム（諱）「司馬師」？
鄧艾伝の「司馬師」
該当の箇所は、鄧艾伝のここ。
（鄧艾伝）
冬十月，艾自陰平道行無人之地七百餘里，鑿山通道，造作橋閣。山高谷深，至為艱險，又糧運将匱，頻於危殆。艾以氈自裹，推轉而下。将士皆攀木緣崖，魚貫而進。
先登至江由，蜀守将馬邈降。
蜀衛将軍諸葛瞻自涪還綿竹，列陳待艾。
艾遣子惠唐亭侯忠等出其右，司馬師纂等出其左。忠、纂戰不利，並退還，曰：「賊未可撃。」
艾怒曰：「存亡之分，在此一舉，何不可之有？」乃叱忠、纂等，将斬之。
忠、纂馳還更戰，大破之，斬瞻及尚書張遵等首，進軍到雒。
劉禪遣使奉皇帝璽綬，為箋詣艾請降。鄧艾は子の恵唐亭侯鄧忠に敵の右陣を、司馬の師纂に左陣を攻撃させた。鄧忠・師纂は戦いに負け、いずれも退却してきて、「賊はまだ攻撃不可能です」といった。鄧艾は腹を立て、「存亡の分れ目は、この一戦にかかっているのだ。どこに不可能などということがある」と、鄧忠・師纂をどなりつけ、斬罪に処そうとした。
ここに司馬師のフルネーム（諱）が登場してたり（「司馬師纂等出其左」）。
避諱？
避諱についていまいちよくわかっていないから気になるんだけど。
とりあえず、名前（司馬師でいえば師）を出すのは失礼程度の認識だったり。世説新語の鍾会たちの親の諱を織り込む嫌がらせとかが印象的。
ただ、世説新語の例では、文章に織り込んで父親の諱が出されることも失礼なことと認識されている様子だから、「司馬の師纂」の一部なのはわかっていても、その上でそれならいいのかという部分がきになるところではあったり。
世説新語の避諱関連
陸機か陸雲もあった気がするけれど、とりあえず鍾会のエピソードで。司馬昭も出てくるし。
（世説新語 排調）
晉文帝與二陳共車，過喚鍾會同載，即駛車委去。比出，已遠。既至，因嘲之曰：「與人期行，何以遲遲？望卿遙遙不至。」會答曰：「矯然懿實，何必同羣？」帝復問會：「臯繇何如人？」答曰：「上不及堯、舜，下不逮周、孔，亦一時之懿士。」
晋文帝與二陳共車、過喚鍾會同載、即駛車委去。
比出、已遠。
既至、因嘲之曰、
與人期行、何以遲遲。
望卿遙遙不至。
會答曰、
矯然懿實、何必同羣。
帝復問會、
臯繇何如人。
答曰、
上不及堯、舜、下不逮周、孔、亦一時之懿士。晋の文帝（司馬昭）は、陳騫、陳泰と車に同乗し、途中、鍾会のところを通り過ぎ、一緒に乗るように声をかけておいて、そのまま車を走らせて置き去りにした。鍾会が表に出たときには、すでにはるか彼方であった。やっとのことで追いつくと、文帝は嘲っていった。「人と同行の約束をしておきながら、どうしてぐずぐずしていたのか。君を待ち望んでいても遙遙としてなかなか来なかったではないか。」会は答えていった。「矯（たか）くすぐれて懿（うるは）しく実（まこと）ある者は、どうして群（むれ）をなして行く必要がありましょう。」文帝はまた会にたずねた。「臯繇はどのような人物であったか。」答えていった。「上は堯、舜に及ばず、下は周公、孔子に及びませんが、また一代の懿（よ）き人物です。
これは、それぞれの父親の諱を出して嫌がらせの応酬をしているというお話。
ちなみに司馬昭の父は司馬懿、鍾会の父は鍾繇、陳泰の父は陳羣、陳騫の父は陳矯。
陳寿とこの司馬師表記についての疑問
で、鄧艾伝にまたもどるけれど。
陳寿は司馬師については「三国志」では「司馬景王」と書いて諱では表記してないのに（だから最初誰が誰だかややこしくて印象に残っている）、こんな風に出すこと（「司馬師纂等出其左」）はokなのかとか。
そもそも「師」自体は避けられていないから、それなら司馬とつながって司馬師になることも構わないのかとか。
晋に仕えた陳寿は晋（司馬氏）に気を使って三国志を書いたとされるけれど、こういう偶々の場合は別にフルネームだろうと避諱的に問題ないのかなとか。
ただ、唐の李賀の言いがかりとか、日本だけど豊臣家が徳川に鐘の文章で難癖をつけられたこと（方広寺鐘銘事件）とか考えると、なんとなく陳寿的には危なそうな気がするんだけど、それは私の感覚でそういうわけでもなかったのかなとか。
避諱資料
参考にこんなのみつけた。
CiNii 論文 – 事実を改変させる力としての避諱・序説 : 中国人の歴史記録意識考(1) https://t.co/1YOE8xVVjP #CiNii
これあとで読む— medamayaki (@medamayaki1) 2016年3月5日
まとめ
てことで、とりあえず気になったのでメモしておいたり。
これを根拠にいろいろ陳寿像とかを考えることもできると思うので忘れたくないし。
おわり。