鍾繇さんの不思議エピソード、山椒について?
(鍾会伝)
魏氏春秋曰:會母見寵於繇,繇為之出其夫人。卞太后以為言,文帝詔繇復之。
繇恚憤,将引鴆,弗獲,餐椒致噤,帝乃止。『魏氏春秋』にいう。鍾会の母は鍾ヨウから寵愛された。鍾ヨウはこのためにその夫人を離縁した。卞太后が彼女のためにとりなしてやったので、文帝は鍾ヨウに復縁せよと勅命を下した。
鍾ヨウは憤激し、鴆毒をとりよせようとしたが手に入らず、山椒を食べて口がきけなくなったので、帝はとりやめた。
鍾繇と曹丕とのいきさつはここではおいといて。
鍾繇が憤激して鴆毒を取り寄せようとしたのは、鴆は毒として有名なものだし、毒を飲もうとしたんだろうと考えられるけれど。
でも、ちくま訳をみると、鴆が手に入らなかった鍾繇が実行したのは「山椒を食べて口がきけなくなった」という謎行動だったり……。
なんで山椒を食べるの……というところは、シュールで鍾繇のおもしろエピソードとしては楽しいし好きだけれど、それでもどこか疑問ではあったり。
てことで調べてみたのが数日前の夜中。
Twitterにぽちぽち書いたので、その収録。
Twitterの収録
鍾会伝の鍾繇が山椒のこれ。「 魏氏春秋曰:會母見寵於繇,繇為之出其夫人。卞太后以為言,文帝詔繇復之。繇恚憤,将引鴆,弗獲,餐椒致噤,帝乃止。 」
— medamayaki (@medamayaki1) 2015, 7月 5
鍾繇がちん毒のかわりに山椒を食べて口がきけなくなったっていうの。原文だと山椒じゃなくて「椒」だけ。
— medamayaki (@medamayaki1) 2015, 7月 5
神農本草経
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— medamayaki (@medamayaki1) 2015, 7月 5
こんなのある。毒で別名巴椒。
「巴豆 味辛溫有毒。主治傷寒溫瘧寒熱,破癥瘕結聚堅積,留飲痰癖,大腹水脹,蕩滌五臟六腑,開通閉塞,利水穀道,去惡肉,除鬼毒蠱註邪物,殺蟲魚。一名巴椒。生川谷。」
— medamayaki (@medamayaki1) 2015, 7月 5
だから鍾繇、山椒食べて何したかったのかとか疑問だったけど。鴆毒の代わりってことで、この神農本草経(当時ある)有毒ってある巴椒は手に入ったから毒として食べてみたのかなあとか。この本とかのこんな感じの記述読んで。
— medamayaki (@medamayaki1) 2015, 7月 5
毒が手に入らなかったからその辺にあるもの過食したとかそういうのじゃない感じ?
— medamayaki (@medamayaki1) 2015, 7月 5
もう一度流れの確認
ちくまの「山椒」は原文では「山椒」ではなく「椒」である。
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「椒」ということで、後漢からあった「神農本増経」(薬の本)を探してみると、「椒」でありかつ「毒」なものが存在することが確認できた。
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「巴豆 味辛溫有毒。主治傷寒溫瘧寒熱,破癥瘕結聚堅積,留飲痰癖,大腹水脹,蕩滌五臟六腑,開通閉塞,利水穀道,去惡肉,除鬼毒蠱註邪物,殺蟲魚。一名巴椒。生川谷。」
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鍾繇はこれかこれと類似の書物なり知識なりにもとづいて、鴆の毒の代わりの毒として「椒」の毒を使おうと考えた。
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鍾繇が有毒な「椒」として手に入れて食べた「椒」が実際は何かは分からないが、それは口を聞けなくさせるようなものではあった。
てことで。
ちくま訳をこの解釈で書き換えてみるとこんな感じ?
(原文)鍾ヨウは憤激し、鴆毒をとりよせようとしたが手に入らず、山椒を食べて口がきけなくなった
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鍾ヨウは憤激し、鴆毒をとりよせようとしたが手に入らず、【代わりに(山)】椒を食べて口がきけなくなった
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鍾ヨウは憤激し、鴆毒をとりよせようとしたが手に入らず、代わりに椒を食べて口がきけなくなった
こう解釈すると、より辻褄はあってくる。
面白エピソードとしては微妙になるけれど。
鍾繇はまじめに自殺しようとした説?
鍾会母のために。
とりあえずこれで鍾繇が死んでたら、鍾会どうなったのかなあとか思ったり。
そういうifとかそのうち考えてみようかなとか。
おわり。
(旧ブログ2015.07.07記事移転)