2016.07.02
3779文字 / 読了時間:4.7分程度
三国志

司馬懿は結構、評価もそれから人物像(演義系、史実系とか)も、多様性がある印象。

今回は晋書における司馬懿の評価とか。

晋書における司馬懿評価?

で、司馬懿の孫が建国した晋について書かれた『晋書』(唐の時代に書かれた)での司馬懿のこと。

とりあえず、司馬懿はあまり評価していない(あるいはもっとひどい?)のかなあという印象はあったり。

司馬懿が死ぬまでの最晩年の記述(宣帝紀)はこんな感じ。

(司馬懿と王淩のやりとり)
淩計無所出,乃迎於武丘,[11]面縛水次,曰:「淩若有罪,公當折簡召淩,何苦自來邪!」帝曰:「以君非折簡之客故耳。」
(王淩が賈逵廟に自分は忠臣だった言って自殺すること)
即以淩歸于京師。道經賈逵廟,淩呼曰:「賈梁道!王淩是大魏之忠臣,惟爾有神知之。」至項,仰鴆而死。
(司馬懿が王淩の一族を皆殺しにすること)
收其餘黨,皆夷三族,并殺彪。
(司馬懿、魏の王族を集めて監視下においたこと)
悉錄魏諸王公置于鄴,命有司監察,不得交關。
(司馬懿、天子からの相国にするという待遇を辞退したこと)
天子遣侍中韋誕持節勞軍于五池。帝至自甘城,天子又使兼大鴻臚、太僕庾嶷持節,策命帝為相國,封安平郡公,孫及兄子各一人為列侯,前後食邑五萬戶,侯者十九人。固讓相國、郡公不受。
(6月、夢に賈逵、王淩が出てきて祟り、気分が悪くなったこと)
六月,帝寢疾,夢賈逵、王淩為祟,甚惡之。
(8月、死んだこと)
秋八月戊寅,崩於京師,時年七十三。

晋書、宣帝紀

「晋書」の司馬懿の死ぬまでの流れは、「六月,帝寢疾,夢賈逵、王淩為祟,甚惡之。」→「秋八月戊寅,崩於京師,時年七十三。」(省略なし)のつなげ方に顕著なように、司馬懿は魏の忠臣王淩を非道に殺し、夢で王淩らに祟られた結果死んだ――という流れだったとして書かれている様子。

また、その後の晋書の司馬懿評価もわりと辛辣。

帝內忌而外寬,猜忌多權變。
魏武察帝有雄豪志,聞有狼顧相,欲驗之。乃召使前行,令反顧,面正向後而身不動。又嘗夢三馬同食一槽,甚惡焉。因謂太子丕曰:「司馬懿非人臣也,必預汝家事。」太子素與帝善,每相全佑,故免。帝於是勤於吏職,夜以忘寢,至於芻牧之間,悉皆臨履,由是魏武意遂安。

及平公孫文懿,大行殺戮。
誅曹爽之際,支黨皆夷及三族,男女無少長,姑姊妹女子之適人者皆殺之,既而竟遷魏鼎云。

で、次に引用しているのは世説新語にもある(というか、晋書的に世説新語から採用したのか、同じところから採用したのか)東晋の司馬紹(明帝)のエピソード。

明帝時,王導侍坐。
帝問前世所以得天下,導乃陳帝創業之始,及文帝末高貴鄉公事。明帝以面覆牀曰:「若如公言,晉祚復安得長遠!」迹其猜忍,蓋有符於狼顧也。

高貴郷公は曹髦なので、司馬懿には直接は関係ないけど、まあ司馬昭は司馬昭の子だからか、司馬氏の残忍な血筋という感じなのかな。

さらに、司馬懿の評価が悪いのは、唐の李世民が書いた(書いてる)司馬懿評部分。

制曰:夫天地之大,黎元為本;邦國之貴,元首為先。治亂無常,興亡有運。是故五帝之上,居萬乘以為憂;三王已來,處其憂而為樂。競智力,爭利害,大小相吞,強弱相襲。逮乎魏室,三方鼎峙,干戈不息,氛霧交飛。宣皇以天挺之姿,應期佐命,文以纘治,武以棱威。用人如在己,求賢若不及;情深阻而莫測,性寬綽而能容。和光同塵,與時舒卷,戢鱗潛翼,思屬風雲。飾忠于已詐之心,延安于將危之命。觀其雄略內斷,英猷外決,殄公孫於百日,擒孟達於盈旬,自以兵動若神,謀無再計矣。既而擁眾西舉,與諸葛相持。抑其甲兵,本無鬭志,遺其巾幗,方發憤心。杖節當門,雄圖頓屈,請戰千里,詐欲示威。

この辺まではまあいいとして。

且秦蜀之人,勇懦非敵,夷險之路,勞逸不同,以此爭功,其利可見。而返閉軍固壘,莫敢爭鋒,生怯實而未前,死疑虛而猶遁,良將之道,失在斯乎

諸葛亮と戦わなかったので、司馬懿は良将とはとてもいえないという評価。

文帝之世,輔翼權重,許昌同蕭何之委,崇華甚霍光之寄。當謂竭誠盡節,伊傅可齊。及明帝將終,棟梁是屬,受遺二主,佐命三朝,既承忍死之託,曾無殉生之報。
天子在外,內起甲兵,陵土未乾,遽相誅戮,貞臣之體,寧若此乎!盡善之方,以斯為惑。夫征討之策,豈東智而西愚?輔佐之心,何前忠而後亂?

その後もいろいろあれ。

故晉明掩面,恥欺偽以成功;
石勒肆言,笑姦回以定業。

司馬氏批判としては、この二つのエピソードが有名だったのかも。(晉明は、東晋の司馬紹のこと。石勒は曹操、司馬懿を批判したもの)

てことで引用していたり。

で、

古人有云,「積善三年,知之者少;為惡一日,聞于天下」,可不謂然乎!

李世民の司馬懿評はまとめるとこんな感じなのかな。

雖自隱過當年,而終見嗤後代。亦猶竊鍾掩耳,以眾人為不聞;銳意盜金,謂市中為莫覩。故知貪于近者則遺遠,溺于利者則傷名;若不損己以益人,則當禍人而福己。順理而舉易為力,背時而動難為功。況以未成之晉基,逼有餘之魏祚?雖復道格區宇,德被蒼生,而天未啟時,寶位猶阻,非可以智競,不可以力爭,雖則慶流後昆,而身終於北面矣。

てことで、正史司馬懿(晋書司馬懿)はかなり評価は辛辣、といえそう。

正史司馬懿と演義司馬懿?

正史司馬懿を晋書司馬懿ととるなら、演義司馬懿はそれにくらべるとかなり扱いが良い感じ。

演義の物語の主人公である蜀(諸葛亮)側の敵として登場しているから演義で不当に悪役にされているというイメージもなくはないと思うけれど、正史司馬懿の評判の良くないエピソードはかなり削られているから、むしろ演義司馬懿は司馬懿の好感度アップには貢献したのかも、とも思ったり。

結構司馬懿人気あると思うし(自分もそうったし)。

少なくとも、後世(東晋や唐あたり)司馬懿(司馬氏)はかなり評価が悪くなっていたのを、演義(系)は(諸葛亮のライバルに採用するという司馬懿評価自体にはそれほど関係ない理由だったかもしれないにせよ)、また回復させていっているようなところはある気はしたり。

正史司馬懿と演義司馬懿の比較――司馬懿の死

正史司馬懿を晋書司馬懿ととるなら、演義司馬懿の扱いの方が遥かに良い例として、まず顕著なのは司馬懿の死とか。

演義の場合はこう。

三国演義、108回

至嘉平三年秋八月,司馬懿染病,漸漸沈重,乃喚二子至榻前囑曰:「吾事魏歷年,官授太傅,人臣之位極矣;人皆疑吾有異志,吾嘗懷恐懼。吾死之後,汝二人善理國政。慎之!慎之!」言訖而亡。
長子司馬師,次子司馬昭,二人申奏魏主曹芳。芳厚加祭葬,優錫贈諡。封師為大將軍,總領尚書機密大事;昭為驃騎上將軍。

晋書(六月,帝寢疾,夢賈逵、王淩為祟,甚惡之。秋八月戊寅,崩於京師」)に比べると、かなり悪意のない描き方だと思ったり。

王淩のことは省かれているし、そもそも基本話は姜維の北伐メインで進んでいるので、単なる魏側の重鎮の死の挿話といった書き方だし。

この直前は姜維のことなので、司馬懿の死は演義ではあくまで「至嘉平三年秋八月,司馬懿染病,漸漸沈重」という扱いでしかない。

てことで、正史司馬懿(晋書)の「六月,帝寢疾,夢賈逵、王淩為祟,甚惡之。秋八月戊寅,崩於京師」の流れと比べると、演義司馬懿の扱いは格段にいいんじゃないかなという感じ。

正史司馬懿と演義司馬懿の比較――司馬懿が殺した人数と残虐行為について

悪役側にしても、演義の場合どっちかというと拾ってる司馬懿のエピソードは良いものメインな気はしたり。

悪いエピソードは捨てているものが目立つし。

司馬懿の残虐さは、晋書が批判しているところ。

及平公孫文懿,大行殺戮。
誅曹爽之際,支黨皆夷及三族,男女無少長,姑姊妹女子之適人者皆殺之,既而竟遷魏鼎云。
明帝時,王導侍坐。帝問前世所以得天下,導乃陳帝創業之始,及文帝末高貴鄉公事。明帝以面覆牀曰:「若如公言,晉祚復安得長遠!」
迹其猜忍,蓋有符於狼顧也。

(晋書、宣帝紀)

で、たとえば公孫氏を司馬懿が討ったこと(ついでに虐殺したこと)については、晋書ではこんなふうに書いてあったり。

(晋書、宣帝紀)

帝謂演曰:「軍事大要有五,能戰當戰,不能戰當守,不能守當走,餘二事惟有降與死耳。汝不肯面縛,此為決就死也,不須送任。」文
懿攻南圍突出,帝縱兵擊敗之,斬于梁水之上星墜之所。
既入城,立兩標以別新舊焉。
男子年十五已上七千餘人皆殺之,以為京観
偽公卿已下皆伏誅,戮其將軍畢盛等二千餘人。收戶四萬,口三十餘萬。

で、一方三国志演義のほうはというと、数や内容まで大幅に削ってあったり。

(三国演義106回)

懿傳令斬之。公孫淵父子對面受戮。司馬懿遂勒兵來取襄平。
未及到城下時,胡遵早引兵入城中。人民焚香拜迎。魏兵盡皆入城。
懿坐於衙上,將公孫淵宗族,並同謀官僚人等,俱殺之,計首級七十餘顆
出榜安民。人告懿曰:「賈範、倫直苦諫淵不可反叛,俱被淵所殺。」懿遂封其墓而榮其子孫;就將庫內財物,賞勞三軍,班師回洛陽。

少なくとも、演義のほうは殺した数については「計首級七十餘顆」の数字しかなかったり。

「餘」に数千人以上入る叙述トリックというわけでもない限り、まあ演義司馬懿は虐殺しないきれいな司馬懿だったり。

まとめ

ともすると、演義は、蜀関係以外の扱いが悪いというイメージがある気はするけど。

司馬懿の扱いは、演義はかなり司馬懿に好意的なんじゃないかなとは思ったり。

とりあえずおわり。









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