2016.03.27
3716文字 / 読了時間:4.6分程度

北伐(ほくばつ)とは、北を攻めること。
三国志においては、ほぼ蜀の諸葛亮および姜維による魏に対する活動を指す。

諸葛亮の北伐は228年から234年のあいだ、姜維の北伐は狭義(費禕死後)には253年から262年のあいだに行われた。

諸葛亮の北伐

諸葛亮による北伐があった年(回数は不問)は次のとおり。

228年、229年、(230年魏延)、231年、234年

北伐関連年表(諸葛亮時代/223-234)

姜維の北伐

蒋琬時代の姜維北伐

239年、240年

北伐関連年表(蒋琬時代/234-246)

費禕時代の姜維北伐

247年、248年、249年、250年

※費禕時代の姜維の北伐について備考

(姜維伝)

維自以練西方風俗,兼負其才武,欲誘諸羌、胡以為羽翼,謂自隴以西可斷而有也。每欲興軍大舉,費禕常裁製不從,與其兵不過萬人。

姜維は西方の風俗に習熟しているという自信のうえに、軍事の才があると自負していたから、各種の羌族を誘い入れ友軍にしようとの望みを抱き、そうなれば隴より以西の地は魏から切断して支配できると考えた。〔姜維が〕大軍を動かそうと望むたびに、費禕はつねに制約を加えて思いどおりにさせず、わずか一万の兵を与えるだけだった。

北伐関連年表(費禕時代/247-252)

費禕死後の姜維北伐

253年、254年、255年、256年、257年、262年

北伐関連年表(姜維時代1/253-256)
北伐関連年表(姜維時代2/257-262)

258年から262年にかけて、姜維は成都にいて北伐を行っていない。

258年は黄皓の専政がはじまった年でもあった(後主伝「宦人黄皓始專政」)。

北伐の回数について

諸葛亮北伐、姜維北伐等、それぞれ第一次北伐、第二次北伐……と呼ばれたりもするが、人によって微妙に数え方が違ったりするので、素直に何年の諸葛亮の北伐等と言った方が結局はわかりやすいかもしれない。
諸葛亮の第一次北伐に関しては、それだけで通じるだろうけれども。

北伐関連地図について

北伐関連はある程度地図も見た方がわかりやすい。

諸葛亮はだいたい長安方面、姜維はほぼ涼州(隴右)方面に向かっている。

→北伐関連地図

三国志地図(北伐関連)益州+涼州

試作品

北伐の意義について

蜀の国是は漢の継承である。
北伐をしないことは建国の意図に背くことになるのではないか。

(先主伝)

即皇帝位於成都武擔之南。
為文曰:「惟建安二十六年四月丙午,皇帝備敢用玄牡,昭告皇天上帝后土神祇:漢有天下,歷數無疆。曩者王莽篡盜,光武皇帝震怒致誅,社稷復存。今曹操阻兵安忍,戮殺主後,滔天泯夏,罔顧天顯。操子丕,載其凶逆,竊居神器。群臣將士以為社稷墮廢,備宜脩之,嗣武二祖,龔行天罰。備惟否德,懼忝帝位。詢於庶民,外及蠻夷君長,僉曰『天命不可以不答,祖業不可以久替,四海不可以無主』 。率土式望,在備一人。備畏天明命,又懼漢阼將湮於地,謹擇元日,與百寮登壇,受皇帝璽綬。脩燔瘞,告類於天神,惟神饗祚於漢家,永綏四海!」

(諸葛亮伝)

由是先主遂詣亮,凡三往,乃見。
因屏人曰:「漢室傾頹,姦臣竊命,主上蒙塵。孤不度德量力,欲信大義於天下,而智術淺短,遂用猖(獗)〔蹶〕,至於今日。然志猶未已,君謂計将安出?」
亮答曰:
「自董卓已來,豪傑並起,跨州連郡者不可勝數。曹操比於袁紹,則名微而衆寡,然操遂能克紹,以弱為強者,非惟天時,抑亦人謀也。今操已擁百萬之衆,挾天子而令諸侯,此誠不可與爭鋒。孫權據有江東,已歷三世,國險而民附,賢能為之用,此可以為援而不可圖也。荊州北據漢、沔,利盡南海,東連吳會,西通巴、蜀,此用武之國,而其主不能守,此殆天所以資将軍,将軍豈有意乎?益州險塞,沃野千里,天府之土,高祖因之以成帝業。劉璋闇弱,張魯在北,民殷國富而不知存恤,智能之士思得明君。将軍既帝室之冑,信義著於四海,總攬英雄,思賢如渴,若跨有荊、益,保其巖阻,西和諸戎,南撫夷越,外結好孫權,內修政理﹔天下有變,則命一上将将荊州之軍以向宛、洛,将軍身率益州之衆出於秦川,百姓孰敢不簞食壺漿以迎将軍者乎?誠如是,則霸業可成,漢室可興矣。
先主曰:「善!」
於是與亮情好日密。

また、諸葛亮の隆中対(三顧の礼の時の天下三分の計)には既に北伐の構想は組み込まれている(「外結好孫權,內修政理﹔天下有變,則命一上将将荊州之軍以向宛、洛,将軍身率益州之衆出於秦川,百姓孰敢不簞食壺漿以迎将軍者乎?誠如是,則霸業可成,漢室可興矣」)。

益州に割拠するだけという構想は、劉備も諸葛亮も持っていなかった。

北伐するべきタイミング

諸葛亮の隆中対には、諸葛亮が考えた北伐するべき時期も示されている。

外結好孫権、内修政理、﹔天下有変

呉との連携

蜀の北伐は呉の軍事活動とある程度連動している(例:諸葛亮の第一次北伐は、呉の石亭の戦いと同じ年等)。
その辺りは、北伐関連年表等で呉の動きを確認するとわかりやすい。

天下有変

諸葛亮の第一北伐は、曹丕の死(226年夏)による魏の混乱を「天下有変」とみなして行われたものといえる。
魏の事情的にも、曹丕から曹叡への移行はスムーズだったとはいえない。

姜維の連年の北伐(ただし、253-257は連年であるが、258-262は北伐していない)の期間は、魏において曹芳が司馬氏によって廃される、毌丘倹の乱、諸葛誕の乱などが頻発した時期にも重なる(254-257)。
姜維の257年の北伐は、段谷の戦い敗戦後降格していた時期のものであり、また姜維が出た方面がそれ以外の彼の北伐すべて(涼州)と異なり関中に出ていることから、これは姜維自身の構想する北伐の一つではなく、呉の同盟国として行った北伐なのではないかとも考えられる。

北伐の方法

諸葛亮の隆中対は、彼の北伐構想、北伐計画、北伐論でもあるかもしれない。

荊州と益州

諸葛亮は次のように述べている。

則命一上将将荊州之軍以向宛、洛,将軍身率益州之衆出於秦川

諸葛亮の本来あるいは元来構想していた北伐は、荊州から北上して洛陽方面へ、益州から長安方面へ、の二つを同時に行うことであった。
荊州を失って以降、荊州ルートが使えなくなったことにより、北伐計画は修正を迫られることになる。

失った荊州について

諸葛亮が出した結論は、荊州を失ったから北伐は諦める、といったものではなかった(だからこそ死ぬまで北伐しているのではないか)。

第一次北伐の前、荊州の孟達が魏から離反しようとして結果的に失敗して殺された。
この孟達の行動に、諸葛亮は関わっている(結果的に見捨てた)。

荊州についても、諸葛亮は適宜機会を伺うつもりはあったのかもしれない。

諸葛亮死後、蒋琬は北伐のために荊州を取る計画を立てているが、結局は実施されなかった。

北伐への否定的評価

有名なのは姜維の北伐に反対した譙周の仇国論など。

譙周(姜維北伐への否定)

(譙周伝)

於時軍旅数出、百姓凋瘁、周与尚書令陳祗論其利害、退而書之、謂之『仇国論』、其辞曰、「因余之国小、而肇建之国大、並爭於世而為仇敵。因余之国有高賢卿者、問於伏愚子曰、『今国事未定、上下労心、往古之事、能以弱勝強者、其術何如?』伏愚子曰、『吾聞之、處大無患者恆多慢、處小有憂者恆思善;多慢則生乱、恩善則生治、理之常也。故周文養民、以少取多;勾踐恤衆、以弱斃強、此其術也。』賢卿曰、『囊者項強漢弱、相与戦爭、無日寧息、然項羽与漢約分鴻溝為界、各欲帰息民;張良以為民志既定、則難動也、尋帥追羽、終斃項氏、豈必由文王之事乎?』肇建之国方有疾疢、我因其隙、陷其邊陲、覬增其疾而斃之也。」伏愚子曰、『当殷、周之際、王候世尊、君臣久固、民習所專;深根者難拔、據固者難遷。当此之時、雖漢祖安能杖剣鞭馬而取天下乎?当秦罷候置守之後、民疲秦役、天下土崩;或歳改主、或月易公、鳥驚獸駭、莫知所従、於是豪強並爭、虎裂狼分、疾搏者獲多、遲後者見吞。今我与肇建皆伝国易世矣、既非秦末鼎沸之時、実有六国並據之勢、故可為文王、難為漢祖。夫民疲労、則騷擾之兆生、上慢下暴則瓦解之形起。諺曰、「射幸数跌、不如審発。」是故智者不為小利移目、不為意似改歩、時可而後動、数合而後挙、故湯、武之師不再戦而克、誠重民労而度時審也。如遂極武黜征、土崩勢生、不幸遇難、雖有智者将不能謀之矣;若乃奇變縱横、出入無間、沖波截轍、超谷越山、不由舟楫而濟盟津者、我愚子也、実所不及。後遷光祿大夫、位亞九列。周雖不与政事、以儒行見礼。時訪大議、輒據経以對、而後生好事者亦咨問所疑焉。

張翼(姜維北伐への否定)

(張翼伝)

十八年(255)、与衛将軍姜維倶還成都。維議復出軍、唯翼廷爭、以為国小民労、不宜黷武。維不聴、将翼等行、進翼位鎮南大将軍。維至狄道、大破魏雍州刺史王経、経衆死於洮水者以万計。翼曰、「可止矣、不宜復進、進或毀此大功。」維大怒。曰、「為蛇畫足。」維竟囲経於狄道、城不能克。自翼建異論、維心与翼不善、然常牽率同行、翼亦不得已而往。

※作業中

北伐関連年表・地図一覧

北伐関連年表(諸葛亮時代/223-234)
北伐関連年表(蒋琬時代/234-246)
北伐関連年表(費禕時代/247-252)
北伐関連年表(姜維時代1/253-256)
北伐関連年表(姜維時代2/257-262)

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